独自の技術で社会に貢献する -不二製油株式会社 代表インタビュー

不二製油株式会社 代表取締役社長 大森 達司 氏

B to B(※1)を軸に国内外で活躍する不二製油グループ。チョコレート、植物性油脂、お菓子やパン、そして大豆を原料とした食品素材のグローバル企業で、業務用チョコレートに至っては世界第3位の生産量を誇ります。その日本エリアの統括会社である不二製油株式会社(以下、不二製油)と当社の関係は、現在本社がある阪南事業所に40年前から常駐業者として、建設、土木、改修、解体工事等、様々な工事を施工させていただいております。フットワーク軽く、成功を重ねる企業の代表取締役社長 大森 達司氏に、不二製油の歩みと今後の展望についてインタビューさせていただきました。

― 創立70周年おめでとうございます

2020年10月に創立70周年を迎えることができました。

戦前戦中は繊維会社がもつ製油工場でしたが、戦後、食用油の製造会社として独立しました。日本の代表的な食用油といったら大豆油です。当時、日清製油、豊年製油、吉原製油さんの大豆油は一級品でした。我々は下請けで受託して作らせてもらっていましたが、大手さんとは商品は同じでも会社名によって売値が違うわけです。

70周年と言いますが、不二製油は製油会社としては最後発です。当時、搾油原料は割当て制でしたので、使用実績がないと十分な割当てがもらえない。困って割当てのないものということでパーム油等を絞ることになりました。結果的には差別化につながりましたが、当時は苦労しました。

大豆を絞ると、カスが出ます。これは家畜のエサになるのですが、ここには豊富なアミノ酸をもつタンパク質がある。これをなんとかできないかと知恵を絞りました。大豆を絞った後の脱脂大豆からタンパク質を抽出することに成功し大豆たん白の事業ができました。その後、さらに食物繊維の抽出にも成功し、大豆多糖類として今では収益を上げています。当初はこの食物繊維を、さあ何に使うかと(笑)。何に使えるか分からなかったのですが、何か価値があるのではないかと思っていました。

実は、この大豆多糖類は飲料メーカー様の乳酸飲料の安定剤としてご使用いただいています。またノンアルコールビールの泡を維持するためにも使われています。

我々は人のマネをしないものを作っていこうというのが会社の基本スタンスです。独自の技術で価値ある食素材の提供に、これからも挑戦していきます。

(不二製油の名前はここから来ている。二つとないものをつくる製油会社)

― コロナ禍もいずれ終息して元の世界に戻るでしょうか

コロナ以前に戻るのは難しいですね。戻らないことを前提に行動していかなければならないでしょう。変化に対応していこうと思うと自分たちが変革していかないといけない。経営のスピードを上げるため、少しコンパクトな組織に分割して、企業としての意思決定のスピードも早めます。

今後、日本は高齢化社会が益々進み、人手不足になります。我々の事業も環境の変化に対応していかなければならない。高齢化社会の課題に、健康寿命の延伸が挙げられます。体の健康では、摂取不足とされるタンパク質に対し、弊社の大豆たん白がご提案できます。また頭の健康では、認知予防対策や認知機能の向上に対し、弊社の安定化DHA/EPAを広めていきます。

また昨今の環境の変化という点では、大豆ミートへの関心の高まりもそうでしょう。弊社も需要増に対応し、新しい生産設備を作りました。

― それはどういった背景があるのでしょうか。

SDGs(※2)やESG経営(※3)が重要視される世の中になってきていますが、地球環境に関心がある人が増えてきているのではないでしょうか。

今の若い人に対してはナショナルブランドが通用しなくなってきます。SNSでの紹介も増えてきました。我々も目標を設定し、CO2削減や食品廃棄物の削減に力を入れています。

不二製油グループでは数年前から、サプライチェーン上での森林破壊の問題、人権問題、児童労働撤廃などに向けて取り組んでいます。

肉や乳製品(バター等)についても意識を変えています。油脂は植物性のものを使う製品開発に取り組んでいます。世界の人口増加による食糧不足により、このまま肉を食べ続けることが困難になると言われています。お肉が食卓に並ぶまで、家畜に穀物や水をたっぷり与える必要があり、環境への負荷も問題です。そのため、持続的な食品としてPBF(植物性食品)が広まるようその美味しさを広めていきます。この活動は始まってまだ数年なのでまだまだこれからです。これからの企業は社会的価値がないと存続する意味がないと思っています。我々ももっと自信をもち、本業で社会に貢献していきたいと思っています。

2019年に50周年を迎えた阪南工場には、いまだ40~50年前の設備が残っていますので、それらの更新も課題です。電気は天然ガスを活用してコージェネレーションとして自家発電をし、省エネルギー・省コストと地球環境の保全をめざしています。環境に配慮しながら、工場内の設備を更新して付加価値も上げていかなければならないと計画を立てています。

― 世界情勢が劇的に変わっていく中、コンパクトな体制に組織を変え、スピード感をもって社会的課題に取組まれようという姿勢が特に勉強になりました。お忙しい中、貴重なお話しを聞かせていただきありがとうございました。

(※1)B to B(Business to Business):
法人対法人で企業間取引をしている関係

(※2)SDGs(Sustainable Development Goals):
持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲットからなる。

(※3)ESG経営:
企業が長期的な成長を遂げるために、3つの要素を重視する考え方。3つの要素とは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」を指し、各単語の頭文字を取って「ESG」と呼ばれている。経営の透明性が高い企業や、資本効率化に取り組んだ企業などが高く評価される。